ベトナムでの活動

ベトナム全土の障がい者数は人口の7.8%(約670万人)、その中で視覚障がい者数は全盲60万人、弱視者を含めると100万人と推定されていて、視覚障がい者・視覚障がい児に対する社会環境や教育環境が著しく立ち遅れています。民族フォーラムは、JICA、外務省、郵政省、埼玉県、独立行政法人・福祉医療機構等の公的な資金協力及び社会福祉法人/国際視覚障害者援護協会、在ベトナムの日本企業、ハノイ日本婦人会等の協力を得て、ベトナム盲人協会(Vietnam Blind Association; VBA)を主たるカウンターパートに、2003年よりベトナムの視覚障がい者の自立支援、就労支援、就学支援、社会生活への参加促進等の多方面にわたる支援活動を行っています。

1.ベトナムの視覚障がい者の自立支援活動

 

ベトナム盲人協会(VBA)は、VBA本部(ハノイ)と職業訓練リハビリセンター(Training & Rehabilitation Center; TRC)、42支局(各省レベル)、300支部(各省の郡レベル)で組織され、ベトナムの視覚障がい者に対し訓練リハビリ、指導者育成、職業機会の提供、職業訓練用教材作成、視覚障がい児のための教科書作成等を行っています。弱視者を含めると100万人の視覚障がい者のうちVBAに登録されている人は約4万人に過ぎません。

 

ベトナム戦争の後遺症や、複合的な障害を抱える視覚障がい者も多く、基礎教育を受けることもなく、地方で閉ざされた生活を余儀なくされている視覚障がい者への更なる支援が急がれていました。VBAは視覚障がい者の生活水準の向上及び自立化を図るために、①視覚障がい者用IT機器の整備充実とこれを用いた新しい職業の創生、② IT機器に係る研修の指導者育成、を重点項目として活動していましたが、充分に機能していないのが実情でありました。

 

このような背景のもとで、民族フォーラムは、① VBA本部及び地方盲人協会支局における点字プリンターの整備充実、② IT指導者の育成、の2点を中心に、「視覚障がい者の自立支援活動」を2003年~2010年の約8年にわたり下記の4プロジェクトを通じて、VBA本部及び地方盲人協会支局へ点字プリンター14台とパソコン17台を供与しました。ならびにIT機器(パソコン及び点字プリンター)に係る指導者育成研修も行いました。

(1)ベトナム点字図書館運営支援(JICA 草の根小規模開発パートナー事業)

 

 活動期間:2003年10月~2004年9月

 

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点字プリンターの技術指導

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点字プリンターを使った試験印刷

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点字図書館引渡式典での調印

(2)ベトナムの視覚障がい者の為の点字文化の開花支援

 

 活動期間:2005年10月~2006年10月

 

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IT機器の指導者育成研修

地方盲人協会での打合せ

VBA会長/副会長と民族フォーラム訪問団

(3)ベトナムの視覚障がい者の為の職業創生と自立支援

 

 活動期間:2008年1月~2009年1月

プロジェクト期間中に基調講演者として青木陽子女史を招き、「視覚障がい者の社会参加セミナー」をベトナム日本人材協力センター(VJCC)で開催しました。

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坂場日本国大使のスピーチ

(IT技術研修の開講式

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ワード文書を点字変換する研修

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  青木陽子女史の基調講演

(視覚障害者の社会参加セミナー)

(4)ベトナムの視覚障害者自立支援―ITによる点字図書の普及と人材育成

 

​ 活動期間:2009年6月~2010年6月 

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民族フォーラムの貢献に対して、VBAから浅田プロマネ及び新村ベトナム所長に感謝状が贈られた

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​地方盲人協会職員と浅田プロマネ

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地方盲人協会のITクラスで点字教材を勉強

2.ベトナムの視覚障がい者の就労支援活動

 

ベトナムの視覚障がい者の就労事情が厳しい現状において、マッサージや手工芸が視覚障がい者にとって重要な職域であり、適切な指導や研修を行うことにより視覚障がい者の就労拡大につながる下記の2つの活動を実施しました。三つ編み工房 “Plaits” は2010年から継続的に活動を続けています。

(1)ハノイ市Dong Da地区青年視覚障害者のためのマッサージ職業訓練による就労支援と社会参加の促進

   (彩の国さいたま国際協力基金助成金助成対象事業):2009年10月~2010年2月

 

ハノイ市Dong Da地区のDong Da盲人協会の施設を使用して、東洋医学院を卒業しNguyen Dinh Chieu盲学校で教官を務める2名を講師として招き、Dong Da地区の視覚障がい者10名(男性5名・女性5名)が参加して、マッサージ職業訓練を88日間にわたり実施しました。

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マッサージ職業訓練の様子:最初は職業訓練生が先生の手に自分の手を重ね、その動きをなぞり、次には先生が職業訓練生の手の動きを確認しながらの指導が重ねられた

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訓練生一人ひとりに認定書)が配られ、全員揃って記念撮影

(2)三つ編み工房 “Plaits”

 

視覚障がい者の自立と生活水準の向上、及び地域社会に根づいた就労支援を目指して、視覚障がい者手作りの三つ編みを使ったマット、巾着、手提げバッグ、コースター等の工芸品を製作・販売する「三つ編み工房 “Plaits”」を、新村ベトナム事務所長が立ち上げました。手工芸品は、視覚障がい者と晴眼者の共同製作です。日本国内のイベント(グローバルフェスタJAPAN、さいたま国際フェア、川口ボランティア見本市等)で三つ編み手工芸品の展示・販売を行っています。

 

 

 

  

  

     

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三つ編み作業

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三つ編みマット製作の技術指導

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ハノイ市内のバザーで展示販売

3.ベトナムの視覚障がい児の就学支援活動

 

(1)初等教育の点字教材の作成及び教員養成(国際ボランティア貯金寄附金に係る援助事業)

 

 第1期:2010年6月~2011年3月  第2期:2011年4月~2012年3月

 

ベトナムの視覚障がい児は、盲人協会支局又は支部に併設されているプレスクールで学んだ後、健常者が通う普通小学校に通うか、またはハノイ市・ホーチミン市・ダナン市にある盲学校で学びます。プレスクールでは、①「視覚障がい児が衣食住の日常生活を送ることができる」ための生活訓練指導、②「点字を読むことができる」ための点字識字教育、③盲人協会職員自らが作成した点字教材を用いた補習授業等を行っています。プレスクールで或るレベルに達した視覚障がい児は、近傍の普通小学校に入学し、健常者児童・生徒と一緒に授業を受けています。

 

国語の点字教科書は文字が中心なので点字プリンターを活用して製作が可能ですが、図表の多い算数の点字教科書を作成するのが困難で、プレスクールには算数の点字教科書は1冊もありません。このためプレスクールが様々な工夫を凝らしながら算数の補助教材を作成しています。

 

以上の背景のもとで、2010年~2012年の約3年にわたり、視覚障がい児のための点字算数教科書の作成及び教員養成を行いました。

 

配分事業完了報告書集(第1期は11ページ、第2期は4ページ)はこちら → 

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点字算数教科書の印刷

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地方の盲人協会に点字算数教科書を寄贈

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教員養成期間中の教育実習の様子

(2)ハノイ市BAVI地区の視覚障がい児の就学支援:2009年~2011年

ハノイ市中心から車で約1時間半のBAVI地区には、500人余の視覚障がい児/者が暮らしています。BAVI地区の視覚障がい児のためのプレスクールの開設支援及び視覚障がい者(成人)のための点字識字教室の開講支援を行いました。

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点字教科書や点字器で学ぶ子供たち

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ピアニカや卓球で遊ぶ子供たち

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BAVI地区の視覚障がい児とベトナム所長

4.ベトナムの視覚障がい者の社会参加の促進支援活動

(1)視覚障がい者の社会参加の支援、及び日本留学を志す視覚障がい者支援

Ms. Do Thuy Ha(全盲)は、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業7期生(2006年)として日本に留学し、日本留学中に日本語検定4級を点字受験して合格しました。ベトナム帰国後も日本語の勉強を続け、2007年にはベトナムで初めて点字受験により日本語検定3級を取得しました。

 

Mr. Pham Van Son(全盲)は中学生時代に失明しました。彼は、社会福祉法人/国際視覚障害者援護協会の奨学金制度により、筑波大学付属特別支援学校へ留学し、2008年に、日本の国家資格である「鍼(はり)」「灸(きゅう)」「按摩(あんま)・マッサージ・指圧」の試験にそれぞれ合格して、ベトナムに帰国しました。その後、2013年4月から広島大学教育学部で特別支援教育を履修し、2015年春からは筑波技術大学大学院修士課程に進学して、修士論文「ベトナムと日本における視覚障がい者の鍼灸・按摩の現状の比較研究」を大学に提出して2017年3月に修士課程を無事終了しました。

民族フォーラムは、Ms. Do Thuy HaとMr. Pham Van Sonの2人をプロジェクトに積極的に参加させることにより、2人の社会参加の促進を図りました。

 

Ms. Nguyen Thi Xuyen(全盲)はハノイ・サクソン地区の盲人協会職員で、日本留学を希望していました。民族フォーラムはハノイ市中心部のヌイチュック日本語センターへの彼女の入学を薦め、ヌイチュック日本語センターでは視覚障がい者の受け入れは初めてとあって、彼女の学費は免除されました。そして2010年7月に日本留学が決定し、2011年~2015年にかけて社会福祉法人/国際視覚障害者援護協会の奨学金制度により、筑波大学付属特別支援学校へ留学し帰国しました。2016年4月に再び渡日して、筑波技術大学大学院修士課程技術科学研究科/情報アクセシビリティを専攻し、修士論文「ベトナムにおける視覚障がい学生の学修環境改善のための基礎的研究」を執筆して2018年3月に修士課程を無事終了、2018年4月にベトナムに帰国しました。

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Donda地区マッサージ研修でコーディネーターを務めるMs.Ha (左端)

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TRCで行われたセミナーで「特別支援教育」に関する基調講演をするMr.Son

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ヌイチュック日本語センターで勉強するMs.Xuyen (左端)

(2)川畠成道バイオリンコンサート

 

前述の全盲のDo Thuy Haさんは日本留学中に川畠成道氏のバイオリン演奏を聴き、ハノイでの演奏会開催を彼に懇願しました。ベトナム帰国後に彼女の希望を聞いた民族フォーラム・ベトナム事務所は、ベトナムの視覚障がい者の人達に生の感動を伝え、彼らの自立への勇気のきっかけとなることを趣旨に、バイオリニスト川畠成道氏を2007年4月にハノイに招き、チャリティ・コンサートを開催しました。幼少期に視覚障がいを負い、耳からの情報だけで勉強を重ねた川畠成道氏の素晴らしい演奏は、聴き入った人々の心に響き、未知への勇気を植えつけました。

 

主催:NPO民族フォーラム・ベトナム事務所

後援:日本大使館、国立ハノイ音楽大学、国立ハノイ眼科病院、ベトナム盲人協会・盲学校、アジア失明予防の会

協賛:みずほ銀行、CANON、J-POWER、ベトナム日本人材協力センター(VJCC)、ハノイ日本婦人会

 

2007年4月23日 午後3時:

          国立眼科病院において患者・病院関係者の約150人が出席し、川畠成道氏のバイオリンコンサートを開催

 

  同年4月23日 午後7時 :

          Nguyen Dinh Chieu盲学校講堂において盲学校生徒・教職員・盲人協会関係者の約150人が出席し、川畠成道氏            のバイオリンコンサート及び盲学校生徒による演奏会を開催

  同年4月25日 午後5時 :

          国立ハノイ音楽大学ホールにおいて一般・視覚障がい者・音大生・音大関係者の約420人が出席し、川畠成道氏          及びベトナム国立交響楽団のチャリティコンサート(指揮:本名徹次氏)を開催

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​国立眼科病院(ハノイ)での川畠成道バイオリンコンサート

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国立ハノイ音楽大学ホールでのコンサート